July 2009 Archives

マネーの流れの揺り戻しに警戒せよ

これまで、景気のV字回復期待が盛んにメディアで喧伝され、株価を支えてきた。
だが、投資家たちはそろそろ「根拠無き楽観」に対して、
冷静になり、マネーが動き始める可能性がある。

野村インターナショナルの欧州金利戦略責任者の
チャールズ・ディーベル氏は下記の見通しを述べた。
「国内総生産(GDP)と10年物米国債利回りの相関関係が途絶えたのは、経済成長とインフレが債券市場で過大評価されていることを示唆している」
「投資家はいずれ降伏し、V字型の景気回復を織り込むのをやめるだろう。それによって長めの債券買いに拍車がかかるだろう」

一つずつ詳しく見ていこう。

GDPと10年物米国債の利回りの関係について考えよう。
金融危機の中、GDPの減少が続いており、
本来であればマネーは株式よりも安全な国債に逃避することになる。
国債にマネーが逃避すると、国債の価格は高騰するため、利回りは減少する。
ところが今回の場合、GDP減少が続いているにもかかわらず、
楽観的で強気な姿勢がアナリストや要人の口から連呼されており、
実体経済の悪化を無視して、株式市場は上昇を続けてきた。
そのため、本来であれば国債に逃避するはずのマネーが、
逆に株式市場に流れ込んでおり、
国債が下落、金利が上昇するというミスマッチな状況になっていたのである。
 
ディーベル氏が指摘しているように、
景気回復に対する過度な期待が、市場をゆがめているのだ。
だが、そうした矛盾をはらんだ状態は、いつまでも続けられないだろう。
今年の後半には始まるとされている景気のV字回復だが、
その兆しはいっこうに見えない。
投資家たちが一斉に失望したとき、
マネーは雪崩を打って米国債に流れ込む可能性が高い。
 
(特に、7月以降、米国政府にとっては長期米国債の発行が頭の痛い問題であり、マネーを何とか誘導して長期米国債を売りさばかなければならないのである!)

外貨準備を一斉に短期米国債にシフトする新興国

ドル基軸体制を巡って、見逃せない動きがあった。
それは、中国やロシアを始めとする新興国が、
保有する米国債の構成を、1年以内の短期米国債に組み替えているという。
しかも、かなり大急ぎで短期米国債にシフトしているのだという。
それはどういうことか?
すなわち、米国債に対する信用は、
あと1年程度が限度であると判断しているのである。
さらに踏み込んで言うならば、米国債を今後1年以上保有することは、
非常に危険だと言うことである。
 
中長期に渡って米国債を保有していても、
償還される前にドル基軸体制が消滅する――
つまり、中長期米国債は紙くずと化すと見なしているに等しい。
中国は以前から短期米国債に、資産をシフトしている動きがあったのだが、
 
他の新興国もそれに倣う形となった模様である。
恐らく、何かしら水面下で大きな動きがあったのではないだろうか。
中国が貿易決済に人民元を普及させ始めていることも、
決して無関係ではあるまい。
大量の中長期米国債を保有する日本政府は、
果たしてこの潮流を目の当たりにして、どのように動くのだろうか?

米CITグループ

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緊急融資30億ドル決定の朗報にもかかわらず更に事態急変!

資金繰りが困難となり、危機的状況に陥っているCITグループ。
債権者側から三十億ドルの緊急追加融資を受け、
何とか最悪の状況を回避したかに見えたのだが、
早くも事態が急変しているようだ。
追加融資30億ドルだが、そのうち20億ドルは
合意に達した20日からすぐに借入れ、
残る10億ドルも10日以内に利用できる手はずとなっていた。
そして、8月17日に返済期限を迎える債券(変動金利型シニア債券)を、
額面の82.5%で現金で買い取る計画を発表した。
そうした発表・報道を受け、一時は大幅に株価が上昇を見せた。
 
ところが、最新の決算が発表されると事態が急変。
15億ドルの赤字を計上した他、
8月の債務返済を乗り切るのに十分な資金が
手元にないことが明らかとなったのである。
また、証券取引委員会にCITが提出した書類から、
四十億ドルの資本不足であることが明らかになった。
 
さらに、8月17日が返済期日である変動金利型シニア債券の
債務返済が失敗に終る可能性が出てきたのである。
8月17日期限の債務は10億ドルなのだが、
十分な手元現金が無いため、
債券の買い取りを通した返済処理がうまく行かない可能性が高いという。
目下の注目は、8月の債務返済が可能かどうかである。
 
しかし、仮に8月の債務返済を乗り越えたとしても、
年末及び来年には一層厳しい返済が待ち受けている。 
年末までには17億ドルの債務返済が、
2010年には80億ドルの債務返済が期限を迎えるのである。

ノンバンクとしての融資事業が、
金融危機の荒波を受けて収益構造が崩壊に瀕しており、
頼みの綱となるのは、事実上米国政府となるのだが、
政府側はCITグループの支援に消極的である。
 
ここまで絶望的な状況がたたみかけられるとは、
昨日の楽観ムードからはかけ離れたものがある。
 
CITグループの破綻による実体経済への影響は、
どうやら9月から本格化し、
米国の新しい財政年度が始まる10月以降に、暗い影を落とすことになるかもしれない。

IMF、SDRを2500億ドル分発行

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間接的にドル脱却を進めるカラクリを読み解く

以前より話題にのぼっていたSDR(特別引き出し権)が、
IMFから2500億ドル分発行されることになった。
IMFの理事会によると、IMFに加盟する186カ国にSDRを配分。
そして、そのうち1000億ドル相当分を、新興国や発展途上国向けに割り当てるという。
外貨準備が不足し、対外債務返済に窮していた新興国や
発展途上国にとっては干天の慈雨である。
 
SDRはドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨で構成される合成通貨である。
各国は、このSDRを必要に応じてドルなどの外貨に変換し、
債務返済や輸入の決済に割り当てることができる。
 
今後、中国など豊富な外貨準備を保有する国が、
新興国や発展途上国支援という名目でSDRをかき集める可能性がある。
つまり、間接的なドル資産売却であり、一種の「出口戦略」である。
市場で直接米国債を売却するよりも、かなり影響を抑えることができる。
 
本音ではドルの将来に不安を抱き、
外貨準備構成の多様化を図りたい中国にとっては願ってもない話だろう。
大喜びで、新興国や発展途上国からSDRを買い上げ、
ドルなどの決済用通貨と交換することだろう。
 
今後、中国がどれくらいSDRを買いあさるのか、その動向に注目したい。

景気底打ちなど片腹痛し!

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失業とローン破綻、悪夢の連鎖が加速する!

2009年6月の雇用統計が発表された。
それによると、失業率は前月より0.1%増加の、9.5%。
非農業部門では雇用者数が前月比で46万7000人の減少となった。
労働人口が、1億5492万人ということから計算すると、
0.1%は、15万4920人にあたる。
雇用者数が46万7000人減少したのであれば、
0.3%ほど減少していなければおかしい。
どうやら、季節調整による結果、
6月は0.1%の失業率上昇で済んでいるようだ。
つまり、季節調整という名の「統計マジック」である。
季節調整無しの場合、失業者数は6月に112万人増加している。
その一方、季節調整が加わると、21万人の増加にとどまっている。
 
さらに読み解いていこう。
米国における失業で特徴的なのは、
若い世代が突出して高い失業率となっていることだ。
季節調整込みの数字であるが、
10代の失業率は24%に達している。
完全失業者で24%であるということは、
不安定雇用の者も含めると50%近い数値になることだろう。
また、業種別では製造業の失業が相変わらずキツイようだ。
クライスラーやGMの破綻の影響もあってか、
6月には13万6000人が失業した。
ストレステストの際には、9%で収まると豪語していた米国政府だが、
今となっては、今後2~3ヶ月で失業率は10%になると実態を認めた発言をしている。
このように失業率の悪化に歯止めが掛からないのだが、
それと連動するように住宅ローン返済に行き詰まり、
住宅の差し押さえや破産する事例が急増している。
失業とローン破綻は、強い関連性があるのである。
米国の住宅差し押さえは、2010年後半から年末にかけて
ピークを迎えるという予測がされている。
言い換えれば、失業率も2010年後半から年末にかけてピークを迎えるととらえても間違いではない、ということである。
 
さて、今年だが、全米不動産業者協会のエコノミストの分析によると、
今年の住宅差し押さえ件数は過去最高の250万件に達するとのことである。
つまり、今年一年の失業率の増加は、
過去最悪のペースになることは、
ほぼ間違いないのである。
 
米国経済地獄絵図は、まだ始まったばかりなのだ。

OECDが発表したGDP成長見通し

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そのカラクリとは

OECDが先進各国及び新興国のGDP成長率の見通しを発表した。
 
その一覧を以下に記す。

【OECD各国実質GDP成長率の見通し】
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  国名    2008年  2009年  2010年
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  日本    -0.7%   -6.8%   0.7%
  米国     1.1%   -2.8%   0.9%
  ドイツ    1.0%   -6.1%   0.2%
  フランス   0.3%   -3.0%   0.2%
  イタリア  -1.0%   -5.5%   0.4%
  英国     0.7%   -4.3%   0.0%
  カナダ    0.4%   -2.6%   0.7%
  ユーロ圏   0.5%   -4.8%   0.0%
 OECD全体  0.8%   -4.1%   0.7%
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【新興国のGDP成長見通し】
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  国名    2008年  2009年  2010年
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  ロシア        -6.8%   3.7%
  インド         5.9%   7.2%
  中国          7.7%   9.3%
  韓国          2.2%   3.5%
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2009年には大きく落ち込みを見せているが、
2010年には底を打つという見通しである。
 
ただし、この予想表を見る際に注意が必要である。
 
それは、上記GDP成長は、
「莫大な財政出動を大前提とした数字」ということである。
 
前例がないほどの大規模なマネー供給をつぎ込んで、
やっとの思いで上記の数字なのである。
 
もし、国債発行がうまく行かないなど、資金手当にしくじろうものならば、
GDP成長率はマイナス2桁に突入してもなんらおかしくはないだろう。
 
いつまで続けられるか分からない財政赤字という薄氷の上に載せられた
予想数字であることを踏まえて見なければならないのである。