熱力学的サイクルとしての経済活動

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 熱力学的サイクルとは、熱エネルギーから動力を取り出すために人類が発明した熱機関の効率を考察する際に、19世紀の物理学者サディ・カルノーが導入した循環過程(サイクル)のことです。この概念は、ガソリンと空気を混合したガスを吸気し、圧縮し、爆発燃焼させ、ガスが体積膨張する際にピストンとクランクシャフトによって力学的動力(回転トルク)に変換し、燃焼ガスを最終的に排気する、という4サイクルの内燃機関(エンジン)の熱効率の解析にも応用されています。
 さて、いま説明した内燃機関は、見方を変えると、燃料ガス(ガソリンと空気の混合ガス)という「原材料」を入力とし て、「動力」という出力を取り出す際に、高温排気ガスという廃熱・排気を副産物として出す「開放系の循環過程」とも見れます。閉鎖平衡系の熱力学は19世 紀に開拓・発展し、壮大な古典熱力学の理論体系として完成しました。一方、「開放系の熱力学」は20世紀になって少しずつ発展し、21世紀の現在でも建設 途中と云えます。建設途中ではありますが、この見方を抽象化、拡大解釈してゆくことで、人間の行っている社会的活動である企業での経済活動の分析にも利用 されています。
 社会経済活動の環境負荷を解析する際、特に、環境ISO14001では、事業活動において環境と影響しあう可能性のある要素(つまり原因)を「環境側面」と呼び、その結果を「環境影響」(原因に対する結果)と呼んで明確に区別して考えます。
  事業活動の環境影響評価の概念図を以下に示します。社会経済活動も一種の熱機関(エンジン)と見なそう、という発想です。エネルギー(電力、火力、燃料) や水を投入資源とし、原材料(素材、鉱石など)、部品、半製品、商品等を入力として考え、製品、サービスを経済的に有意義な出力と考えます。他に、この事 業活動を行うために副産物として生ずる不要な出力が発生しますが、これには、有害・無害を含めて廃棄物、廃熱、排水、排出ガス、騒音、振動、臭気などが含 まれます。
 実際のエンジンにおいて、ガス欠によってエンストするように、上記の社会経済活動も、投入資源である様々な資源が枯渇 すれば、事業活動は停滞ないしは経済的に成り立たなくなります。また、ラジエータ中の冷却水が不足したり、排気パイプが冠水等により詰まったりすると廃 熱・排気ができなくなる結果、やはりエンジンはエンストします。これと同様に、社会経済活動も、その副産物として生ずる「廃棄物、廃熱、排水」が棄てられ なくなると、いわゆる「糞詰まり」で事業活動が継続できなくなります。棄て場所の枯渇は、今後、ますます深刻な問題となりつつあります。さて、エンジンの 場合、過剰負荷の場合、物理的にクランクシャフトが折れたり、異常振動を発生したりなどの故障を招きますが、社会経済活動の場合には、その出力である製 品・サービスの需要が不安定になりますと、持続的な活動が難しくなります。需要が枯渇していまえば、製品そのものが売れなくなってデフレ状態になります し、逆に、需要が逼迫すれば、生産が追いつかなくてインフレ状態となります。いずれにしても、安定した事業活動を阻害する要因として作用します。
 社会経済活動の環境への影響を考察する際には、このような熱物理学の概念を用いた分析が、有力な解析ツールとして用いられています。

参考文献:J.リフキン、エントロピーの法則、(祥伝社、1990年)

     槌田敦、資源物理学入門、(NHKブックス、1982年)



                             事業活動の環境影響評価(概念図)


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このページは、OSLarkingが2009年6月20日 03:09に書いたブログ記事です。

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